小豆島の文化を継承する 農村歌舞伎②

こんにちは、九冨です。
前回は、小豆島肥土山地区で今もなお受け継がれている農村歌舞伎についてご紹介しました。
今回はもう一つの地域、中山地区の農村歌舞伎をご紹介していきたいと思います。

中山地区は、「日本の棚田百選」にも選ばれた山の斜面に700枚を超える田んぼが連なる「中山千枚田」があることでも有名な地域です。
中山農村歌舞伎は、実りの秋を迎える毎年10月上旬に、五穀豊穣の恵みに感謝を込め、春日神社への奉納歌舞伎として行なわれています。

「中山の舞台」と呼ばれる歌舞伎舞台は千枚田のある場所にほど近い、春日神社の境内にあります。
国の重要有形民俗文化財に指定されている茅葺屋根の舞台は、江戸時代の天保年間以前に琴平にある旧金丸座を参考にして建築されたと伝えられています。

(写真/芥川仁)

中山地区に関しても、役者や衣装、舞台周りの事など歌舞伎に関する全てのことを地域の人たちが担っています。
小学生の子どもから80過ぎの高齢者の方まで、地域住民総出で農村歌舞伎に関するあらゆることを行っていくのです。

演目が進むにつれて、だんだんと日が暮れていくのを見ることが出来るのも農村歌舞伎ならでは。
何度も舞台に立っているベテランの役者さんが、アドリブを言って笑わせてくれたり、見どころの場面で観客席からおひねりが飛んだり。
豪華な衣装に身を包んだ役者さんが花道を通ったりと、本物の歌舞伎に引けを取らない演技で観客を楽しませてくれます。

(写真/芥川仁)

演目と役者を決め、稽古をつけ、演目を演じる準備をして、舞台を上演する。
数ヶ月にわたって行われる工程を経て語り継がれ、受け継がれていく地域独自の文化。
今もなお見る人を魅了してやまない素朴で美しい農村歌舞伎。
それを楽しむことが出来るのも、この地域に住む人たちの熱心な思いとたくましい力があってこそだと思うのです。